ネジを舐めにくくする方法について
2012年10月25日 23:26
| 素材・マテリアル
■舐めたネジを外す方法 その1、その2はこちらから。
■ちょっと間が開いてしまいましたが、
前回のネジ山が舐めてしまった時の対処に続いて、
舐めにくくするためコツなどについてお話したいと思います。
今回は対処法ではなくて、
ネジを舐めないようにする根本的な施策です。
舐めるには原因があります。
その原因・要因を一つ一つ丁寧に取り除いていけば、
我々は崩壊した十字溝を見る煉獄から開放されるのです。
@.ネジを舐めにくくするためのコツ、テクニック的なもの
■外す前に叩く■
固着したネジは、外す前に貫通ドライバーを当て、
反対側をハンマーで数回叩き衝撃を与えます。
すると、ネジ山とネジ山の噛み合っている部分が一瞬外れて、
ネジが回りやすくなります。
いわばネジに準備運動をさせてあげるんですね。
コレに以前も紹介した5-56をかければ、
硬いネジでも非常に外れやすくなるでしょう。
■インパクト的なトルクを掛ける■
ジワーっと回すのは、舐める原因です。
ネジ山が削れていくだけで全くイイ事はありません。
外すときはできるだけ一撃で回します。
左手でおもいっきりドライバーのグリップを握り、
右手で思いっきり一瞬で回すようにするといいです。
左手は、ドライバーがネジの中心に来るように、
しっかり狙いを定めて下さい。
メガネを引っ掛けられる構造のものはメガネを掛けたり、
T型レンチを使うのも非常にいいですね。
工具箱を結構占有してしまう工具まのですが、常時頼れる素敵なツール。
しっかりトルクかけるときに便利です。
ハンドルの長さは、バイクにつかうのであれば300mm位有るもので、
十分つぶしが利くと思います。
A.良いドライバーを使う
先程もちょっと話が出ましたが、良い道具は違います。
作業者の能力不足や、雑な作業によるクオリティ低下も、
ある程度はカバーしてくれます。
「弘法筆を選ばず」〜なんてことを言いますが、
素人は道具を選んだほうが絶対に良い、と考えています。
とくに選んだほうがいいのはドライバー系。
精度感のない粗雑・ボロいドライバーを使うと、
飛躍的にネジなめを誘発します。
芋な純正・車載工具は、非常時にこそ使わないほうがいいと思います。
よっしゃ工具を揃えるぞ!となると、
スパナやラチェットのボックスにお金をかけがちなんですが、
ドライバーはできるだけいい物をお勧めします。
KTCやTONEなどの一流メーカーを使えたら最高。
そこそこいい値段しますが、Monotaroとかだと結構安く売ってます。
でも高いだけあって、良いドライバーはいい仕事してくれますよ。
会社の工具が全部KTCなんですが、やっぱり安心感が違います。
あとサイズ違い。
ドライバーには御存知の通り#1,#2,#3の3種類があります。
違う番手を使うと舐めやすくなる、というか舐めて当然なので、
ちゃんとネジにあったものを使いましょう。
ドライバーは三種三本所有、±で六本保有が基本ですね。
・・・偉そうなことを色々言いましたが、
貧乏人の自分はなのでベッセルを愛用中です。
あらゆるホームセンターでよく見かけます。
でもコストパフォーマンスが高く、
出来もよいドライバーだと思っています。
特にメガドライバーの性能は秀逸。
叩ける・メガネを引っ掛けられる・グリップのサイズもでかい。
貫通ドライバーとしてのコスパは最高クラスだと思います。
プラスマイナス所有してます。オススメの工具です。
B.ネジとネジ穴はきれいにする。
ネジが固着する要因で大きなものはやはりサビがあります。
水、皮脂、泥などがついていたら、
時間が経つと徐々に腐食してサビを誘発します。
あと、外すときに「パキッ!!」という音がした場合は、
かなりの確率で大なり小なりのサビ・電蝕(違う金属同士が接していて濡れたりすると、
イオン化傾向の差による電位差が発生し、白い粉のようなサビを発生させる現象)が発生しています。
ネジとネジ山はワイヤーブラシなどで汚れを落とし、
パーツクリーナーで綺麗に洗浄しましょう。
モリブデングリスを少量塗布してグリスアップするのも効果的です。
グリスが防錆効果になり、電蝕も防げます。
グリスを塗布して組み込むのは、振動でネジが緩みそうで怖いかもしれませんが、
実際には潤滑して組み込んだネジは同じ力で締めても締結力が高く、緩みにくくなります。
外すときも、錆びることがないので容易に外せるようになります。
注意点として、サービスマニュアルなどで
緩み防止のネジロック剤(LOCTITE等)を指定されている部位であれば、
それをきちんと塗って下さい。
C.トルク管理をきちんとする。
カチャカチャ、カチャカチャ
ギューーーーッ!!
「しっかりしめたよ!」
という場合、7割くらいの確率でオーバートルクで締め込まれています。
アンダートルクの場合は緩むだけ(それも怖いが)、
オーバートルクの場合は、ネジが外れなくなってしまい、
最悪走行中の振動で折れます(怖
ネジやボルトは、一般的に「このくらいの力で締め込んで下さいね」
という標準トルクが規定されていて、
しっかり締め込めばOK!というわけではありません。
決められたトルクで締めましょう。
話がちょっとずれますが、
エンジン系統や、サスペンションやタイヤ周りなどに手を入れる場合、
よほどトルクに関する経験値がない限りは、
トルクレンチを使ったほうがいいと思います。
機械はネジやボルトで組み合わされた集合体。
きつすぎず緩すぎず、設計時に設定された力で閉め込んであげれば、
本来の性能を発揮します。
安易にチューン・アップするよりも、まずはこういう部分が大事。
高いですが、出来ればトーニチ製が理想です。
良い道具を使ったほうが〜 の話にもつながるのですが、
使った時の安心感が違う工具です。
以前一緒のアパートに住んでいた友達が、
上記のミツトヨのレンチを持っていました。時々使わせてもらったんですが、力のかかり具合、閉めこんだ時のクリック感、一回設定したトルクの再現性。全てにおいて高性能でした。自動車の開発・生産工程でも使われているメーカーの工具です。
以前赤い某台湾ブランドの安物を買ったんですが、
5回ぐらい使ったら、設定したトルクに達してもラチェットが機能しなくなり、どこまでも締まるようになるという驚異的なタフネスの無さが露呈。。
結局汎用大型レンチとして使っています(涙
D.そもそも+ネジなんか使わない。
「なぜネジが舐めるのか?」
「ソコに “+ネジ” があるからだ」
だったら交換してしまいましょう。
なめないボルトに。
ということで、自分は舐めた箇所は積極的にステンレス製の六角穴付きボルトに交換しています。クラッチ交換をした時も、プラスネジを六角穴付きに交換しました。
今回のポイント部分も六角穴付きボルトに全部リプレイス。
5本交換し、100円でお釣りが来ました。
これで右側のボルトは全てステンレスの六角穴付きになりました。
右側に関してはもう舐めることはないでしょう。
とはいえ+ネジがダメかというと、、、
機能的にはNGですが、時代を感じさせる見た目には趣を感じます。
マイナスネジが主流だった、1960年代前半。
それまでプラスネジは、H・F・フィリップスというアメリカ人が1935年に取得した特許でガチガチに守られていて、おいそれと使用することが出来なかったようです。
丁度1960年頃に特許が切れ、それを境に各メーカーが積極的にプラスネジを使い始め、あっという間に普及したとのこと。当時の設計者としては「やっと使えた!」という感じだったのではないでしょうか?
なので、極力当時のパーツは残しておきたいと考えています。
僕は「当時物のオリジナル純正パーツを崇奉する人」ではないのですが、
まぁ問題ないのに外す必要もないかな〜と。
これからもトラブルが発生する毎に交換していくと思います。
■以上、だいぶ長々と語って来ましたが、
自分が知っているネジを舐めにくくする方法になります。
皆さんのお役に立てれば幸いです。
以上です〜。
■ちょっと間が開いてしまいましたが、
前回のネジ山が舐めてしまった時の対処に続いて、
舐めにくくするためコツなどについてお話したいと思います。
今回は対処法ではなくて、
ネジを舐めないようにする根本的な施策です。
舐めるには原因があります。
その原因・要因を一つ一つ丁寧に取り除いていけば、
我々は崩壊した十字溝を見る煉獄から開放されるのです。
@.ネジを舐めにくくするためのコツ、テクニック的なもの
■外す前に叩く■
固着したネジは、外す前に貫通ドライバーを当て、
反対側をハンマーで数回叩き衝撃を与えます。
すると、ネジ山とネジ山の噛み合っている部分が一瞬外れて、
ネジが回りやすくなります。
いわばネジに準備運動をさせてあげるんですね。
コレに以前も紹介した5-56をかければ、
硬いネジでも非常に外れやすくなるでしょう。
■インパクト的なトルクを掛ける■
ジワーっと回すのは、舐める原因です。
ネジ山が削れていくだけで全くイイ事はありません。
外すときはできるだけ一撃で回します。
左手でおもいっきりドライバーのグリップを握り、
右手で思いっきり一瞬で回すようにするといいです。
左手は、ドライバーがネジの中心に来るように、
しっかり狙いを定めて下さい。
メガネを引っ掛けられる構造のものはメガネを掛けたり、
T型レンチを使うのも非常にいいですね。
工具箱を結構占有してしまう工具まのですが、常時頼れる素敵なツール。
しっかりトルクかけるときに便利です。
ハンドルの長さは、バイクにつかうのであれば300mm位有るもので、
十分つぶしが利くと思います。
A.良いドライバーを使う
先程もちょっと話が出ましたが、良い道具は違います。
作業者の能力不足や、雑な作業によるクオリティ低下も、
ある程度はカバーしてくれます。
「弘法筆を選ばず」〜なんてことを言いますが、
素人は道具を選んだほうが絶対に良い、と考えています。
とくに選んだほうがいいのはドライバー系。
精度感のない粗雑・ボロいドライバーを使うと、
飛躍的にネジなめを誘発します。
芋な純正・車載工具は、非常時にこそ使わないほうがいいと思います。
よっしゃ工具を揃えるぞ!となると、
スパナやラチェットのボックスにお金をかけがちなんですが、
ドライバーはできるだけいい物をお勧めします。
KTCやTONEなどの一流メーカーを使えたら最高。
そこそこいい値段しますが、Monotaroとかだと結構安く売ってます。
でも高いだけあって、良いドライバーはいい仕事してくれますよ。
会社の工具が全部KTCなんですが、やっぱり安心感が違います。
あとサイズ違い。
ドライバーには御存知の通り#1,#2,#3の3種類があります。
違う番手を使うと舐めやすくなる、というか舐めて当然なので、
ちゃんとネジにあったものを使いましょう。
ドライバーは三種三本所有、±で六本保有が基本ですね。
・・・偉そうなことを色々言いましたが、
貧乏人の自分はなのでベッセルを愛用中です。
あらゆるホームセンターでよく見かけます。
でもコストパフォーマンスが高く、
出来もよいドライバーだと思っています。
特にメガドライバーの性能は秀逸。
叩ける・メガネを引っ掛けられる・グリップのサイズもでかい。
貫通ドライバーとしてのコスパは最高クラスだと思います。
プラスマイナス所有してます。オススメの工具です。
B.ネジとネジ穴はきれいにする。
ネジが固着する要因で大きなものはやはりサビがあります。
水、皮脂、泥などがついていたら、
時間が経つと徐々に腐食してサビを誘発します。
あと、外すときに「パキッ!!」という音がした場合は、
かなりの確率で大なり小なりのサビ・電蝕(違う金属同士が接していて濡れたりすると、
イオン化傾向の差による電位差が発生し、白い粉のようなサビを発生させる現象)が発生しています。
ネジとネジ山はワイヤーブラシなどで汚れを落とし、
パーツクリーナーで綺麗に洗浄しましょう。
モリブデングリスを少量塗布してグリスアップするのも効果的です。
グリスが防錆効果になり、電蝕も防げます。
グリスを塗布して組み込むのは、振動でネジが緩みそうで怖いかもしれませんが、
実際には潤滑して組み込んだネジは同じ力で締めても締結力が高く、緩みにくくなります。
外すときも、錆びることがないので容易に外せるようになります。
注意点として、サービスマニュアルなどで
緩み防止のネジロック剤(LOCTITE等)を指定されている部位であれば、
それをきちんと塗って下さい。
C.トルク管理をきちんとする。
カチャカチャ、カチャカチャ
ギューーーーッ!!
「しっかりしめたよ!」
という場合、7割くらいの確率でオーバートルクで締め込まれています。
アンダートルクの場合は緩むだけ(それも怖いが)、
オーバートルクの場合は、ネジが外れなくなってしまい、
最悪走行中の振動で折れます(怖
ネジやボルトは、一般的に「このくらいの力で締め込んで下さいね」
という標準トルクが規定されていて、
しっかり締め込めばOK!というわけではありません。
決められたトルクで締めましょう。
話がちょっとずれますが、
エンジン系統や、サスペンションやタイヤ周りなどに手を入れる場合、
よほどトルクに関する経験値がない限りは、
トルクレンチを使ったほうがいいと思います。
機械はネジやボルトで組み合わされた集合体。
きつすぎず緩すぎず、設計時に設定された力で閉め込んであげれば、
本来の性能を発揮します。
安易にチューン・アップするよりも、まずはこういう部分が大事。
高いですが、出来ればトーニチ製が理想です。
良い道具を使ったほうが〜 の話にもつながるのですが、
使った時の安心感が違う工具です。
以前一緒のアパートに住んでいた友達が、
上記のミツトヨのレンチを持っていました。時々使わせてもらったんですが、力のかかり具合、閉めこんだ時のクリック感、一回設定したトルクの再現性。全てにおいて高性能でした。自動車の開発・生産工程でも使われているメーカーの工具です。
以前赤い某台湾ブランドの安物を買ったんですが、
5回ぐらい使ったら、設定したトルクに達してもラチェットが機能しなくなり、どこまでも締まるようになるという驚異的なタフネスの無さが露呈。。
結局汎用大型レンチとして使っています(涙
D.そもそも+ネジなんか使わない。
「なぜネジが舐めるのか?」
「ソコに “+ネジ” があるからだ」
だったら交換してしまいましょう。
なめないボルトに。
ということで、自分は舐めた箇所は積極的にステンレス製の六角穴付きボルトに交換しています。クラッチ交換をした時も、プラスネジを六角穴付きに交換しました。
今回のポイント部分も六角穴付きボルトに全部リプレイス。
5本交換し、100円でお釣りが来ました。
これで右側のボルトは全てステンレスの六角穴付きになりました。
右側に関してはもう舐めることはないでしょう。
とはいえ+ネジがダメかというと、、、
機能的にはNGですが、時代を感じさせる見た目には趣を感じます。
マイナスネジが主流だった、1960年代前半。
それまでプラスネジは、H・F・フィリップスというアメリカ人が1935年に取得した特許でガチガチに守られていて、おいそれと使用することが出来なかったようです。
丁度1960年頃に特許が切れ、それを境に各メーカーが積極的にプラスネジを使い始め、あっという間に普及したとのこと。当時の設計者としては「やっと使えた!」という感じだったのではないでしょうか?
なので、極力当時のパーツは残しておきたいと考えています。
僕は「当時物のオリジナル純正パーツを崇奉する人」ではないのですが、
まぁ問題ないのに外す必要もないかな〜と。
これからもトラブルが発生する毎に交換していくと思います。
■以上、だいぶ長々と語って来ましたが、
自分が知っているネジを舐めにくくする方法になります。
皆さんのお役に立てれば幸いです。
以上です〜。
【素材・マテリアルの最新記事】
コメントありがとうございます〜。
お役に立てたようで嬉しいです。
MT-01の記事拝見しました。
あんなに速いマシンだったなんて知りませんでした。
これからもよろしくお願いいたします。
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