Z400LTDのエンジンについて
2013年02月03日 18:08
| Z400LTDについて
Z400LTDに搭載されているエンジン、
コレについての考察を述べていきましょう。
だいぶマニアックな内容になりました。
…このページは、「Z400LTDについて 〜まとめページ〜」にリンクしています
空冷2気筒のSOHC 2バルブです。
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最大出力 :36PS / 8,500rpm
最大トルク:3.2kg / 7,000rpm
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車体重量が乾燥で160kgという事を考えると、SR400よりはいくらかパワフルです。
最大トルクが7000回転というかなり高めの位置に設定されているので、
5000回転以上回すと、そこからまたぐんと伸びます。
アメリカンらしからぬ露骨な高回転重視の味付けで、
いわゆる「回して楽しむ」類のエンジンです。
ジャーーーッ!!という勇ましいメカノイズをかき鳴らしながら突っ走るのが正しい姿です。
…タイミングチェーンの調整した方が良いかもしれないですね。。
SOHCの2バルブなので、プラグが横から生えているのも嬉しいポイント。
大変交換しやすいです。
CVキャブと相まってか、1000m超の山に行ってもさほどボコつかないです。
比較的安定した性能を発揮してくれます。
また自分のLTDはポイント点火になります。
最後期型はCDI点火です。そのへんはまた後で。
(ポイント調整の記事はこちらを参照下さい。)
クランクは360度。
等間隔でビュイーーンと爆発が続き、どんどん回ります。
クランクウェイトが薄く、SRとかと比べたら重量は明らかに小さそうです。
そのため、どこどこ感とか、鼓動の類はあまり有りません。
鼓動感を求めてこのバイクを購入すると拍子抜けするので気をつけましょう。
自分は最初後悔しました。
■Z400LTDのエンジンは、
KZ400系のバイクにおける大雑把な区分けでは、「後期型」に分類されます。
前期型と後期型の違いは、エンジンヘッド付近を見比べると分かります。
上の写真は前期型のエンジンです。
CB250Tのような、四角タペットカバーが側面に付いているのが前期型。
400RS, Z400D4などに使われています。
(参考画像:CB250Tのエンジン)
前期型はヘッド周りに持病があるようで、
長く乗っていると、ヘッドからのオイル漏れがひどくなるとの話を聞きました。
またバルブシートが劣化しやすいなどの話も聴いたことがあります。
それらの対策を施されたのが上の後期型です。
横を向いているタペットカバーがなく、ヘッドの前後に4つの蓋が付いているのが特徴。
多少のオイル消費はあるものの、総じて頑丈なエンジンになっています。
1979年以降に発売された、Z400LTDのエンジンは全て後期型です。
このエンジンは海外ではKZ440という440ccのバイクとして発売されています。
LTDはKZ440LTD、もしくはKZ440Hという名前で市場投入されました。
(以前書いた、KZ440についての記事はこちらです。)
■また後期型エンジンも、大きく分けて組合せで3パターンあります。
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【始動方式】 【点火方式】 【駆動方式】
@ セル・キック併用 ポイント点火 チェーンドライブ
A セルのみ ポイント点火 チェーンドライブ
B セルのみ CDI点火 ベルトドライブ
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自分はAですが、クランクケースにKICK STARTERの文字が残っているケースが使われています。
おそらく@からAへ切り替わった直後に生産され、余っていた部品を使ったんでしょう。
こういう事を考えるに、製造ロットまで見るとさらに細かなばらつきが有るのだと思います。
まぁそこまで追求したくなるほど僕はマニアではありません。
…ちなみにベルトは現在もメーカーに在庫があって、
1本4万円を超えるそうです。高いよ。。
■余りスペック的にも見るべき所が無いこのエンジンですが、
特記すべきところでは、クランクが進行方向に対して逆回転することが挙げられます。
以下かなりマニアックな話になりまして・・・・
このエンジンは、クランク軸・バランサー軸・ミッション軸 と3軸構成になっています。
ココまでは普通なんですが、クランク軸とバランサー軸をギアでなく
チェーンで連結しているんです。
必然的にクランク軸とバランサー軸の回転方向が同一になり、
歯車連結のミッション軸で逆回転します。クランクが進行方向で回転していると、
正⇒正⇒逆の順番で回転し、「後ろに進むバイク」になってしまいます。
この機構を採用するのであれば、バランサーとミッションの間に、
もう一本バランサー軸をつけて歯車連結し、正⇒正⇒逆⇒正 として回転方向を
適正に合わせる必要があります。
ただカワサキはそれを良しとしなかった。
「もう一本軸なんか増やしたら、エンジンがデカく、そして重くなってしまう。」
「だったら最初のクランクを逆回転させれば、全部解決するんじゃね?」
本当にそういう軽いノリだったかは分かりませんが、
世の中にまれに見るクランク軸が進行方向と逆に回転するバイクが完成しました。
自分はこのタイプのエンジンは、Z400のお兄さんであるZ750twinしか知りません
(以上、出展:別冊モーターサイクリスト 2013年1月号より。該当誌のインプレ記事)
何でまぁこんな突飛なレイアウトにしたのかと思ったんですが、
おそらく当時のカワサキには、バランサーに使用できるギアのノウハウが
決定的に不足していたんじゃなかろうか? と考えています。
W1シリーズでの振動に悩まされ、振動対策に四苦八苦していたカワサキ。
(現在ではその振動が“味”として再評価されているから、分からないものです。)
W1よりも小排気量の400ccクラスでは、必然的に高速走行でより高回転域を多用します。
高速で回転しつつ、エンジンの爆発力をまともに食らうクランクとバランサー。
クランクとバランサー間を歯車でかみ合わせるとなると、適切な材料や歯の深さ・角度・強度、様々なノウハウを総合した最適設計が必要になります。コレが当時のカワサキには、ノウハウ不足で実現できなかったのではないかと考えました。
仕方なく、クランクとバランサー間をチェーン駆動で設計し、たわみによる多少の余裕代を確保。
これらの工夫により、エンジンサイズを極力小さくし、高回転でも振動が少ないエンジンを具現化したのだろう、と考えています。
…それでも初期の400RSの頃は、チェーンを高速で回転させると遠心力で外側に膨らみ、
バランサー側のスプロケットが刃先だけ摩耗。最悪滑る、というネガが有ったようです。
これも後期型エンジンでいくらか改善されているとのこと。
新技術開発の難しさを感じさせられます。
■カワサキの小排気量4ストロークツインの試金石となったZ400系エンジン。
残念ながら、カワサキの400ccクラスの空冷2気筒は、Z400シリーズで幕を閉じています。
このあとの400ccツインは、"ハーフニンジャ"と呼ばれたEX-4や、
EN400バルカンなどが直接の後継となります。現代ではER-6、ER-4シリーズですね。
クオータークラスでは、空冷250ツイン最強のGPz250をベースとした、
ZZR250系の水冷2気筒にバトンタッチ。現代ではNinja250へと系譜が引き継がれています。
Z400FXや、同エンジンを搭載するZ400LTD-2は、ゼファーの部品がほぼまるまる使用できる、
という大変恵まれた環境にあるのですが、2気筒のZ400は、エンジン周りの部品供給が
かなり厳しくなっています。
オーバーサイズピストンは全滅、ピストンリングにピストンピンもNG.
しかも前期型と後期型で燃焼室形状が若干違うようで、
ピストンの形も違っていておいそれと流用するのが怖い状況になっています。
バルブも在庫がありません(バルブステムシールやシム、スプリングは在庫あり)。
本気でオーバーホールしようとなると、海外から部品を探しまくる必要があります。
アメリカ、イギリス、あと意外にオーストラリアにたくさんパーツがあるとか。
もし本気でオーバーホールしようとお考えの方は、部品調達などで協力しますので、
ぜひお声がけください(笑
幸いクラッチのオーバーホールは可能です。
フリクションプレートをリプロで調達すれば、比較的簡単に部品が揃います。
(クラッチのオーバーホールの記事はこちら)
■以上でLTDのエンジンに関する考察を終わります。
今後記述予定の、車体編などと合わせて読んで下さい。
よろしくお願いします。
【Z400LTDについての最新記事】
この系統は情報少ないので興味津々です。
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